1ー4
小説を読み終えて目を真っ赤に腫らしたともちゃんの話しを聞き流して帰宅する。授業中にすすり泣く音が聞こえたが、確実にひとりだけではなかった。ちゃんと勉強しろよ。
「ただいまー」
遠くでおかえりと聞こえてきた。お母さんが夕食を作りながらテレビでも見てるのだろう。ゲラゲラと笑う声がする。
それを無視して2階の部屋へ向かう。階段は16段。毎日上下しているが嫌なものだ。1階がいい。
部屋に戻ると机にバックを置き、部屋着に着替える。そして髪を縛り上げ、バックの下の手紙をひとつひとつ開いていき、また机に戻していく。内容はいつも通りだ。
全て開け終えると携帯を開きメールを確認する。
「はぁ、少しくらい休ませてくれよ」
バックを定位置である机の横に下ろし、手紙を専用ボックスに入れる。そして机の上に置かれていたノートパソコンを広げる。マイパソコンと言えば決まりはいいが、メールの主の献上品である。
私は伊藤早紀、世の中では菊川瑞希と呼ばれている、有名作家である。手紙には作品好きです。メールには次の作品。献上品なんかただの鎖だ。なにが楽しくてこんな作品書いてると思っているのか。今私はSFが書きたいのだ!
なんて独り言でも言えない。なにせ顔出し、所在、年齢全てNGなのだ。まぁ、これは私がお願いしたことであるけれど。バレたくないし、そもそも私とバレた瞬間に人気なんてジェットコースターの様に下がっていくに決まっている。
とか考えながら次の作品の資料を漁る。次はハッピーに終わらせたいと考えてるから、結婚式場を検索していたのだ。