2ー25
飛びつくようにに抱きつく絵理ちゃん。よろけるが辛うじて立っているドンちゃんに敬意を表する様に謝る。
「ねぇねぇ! 撮って!」
「あいよ」
それには直ぐに反応出来なかった。それなのに、彼は既に自分の携帯を持ち自然に撮っていた。いや、このことがどれだけ異質かわかるだろうか。いや、私でさえ直ぐには思わなかった疑問。なにせ自然な行動だったからである。
「後で送って!」
「わかってるよ」
それより、黒髪になったせいか、ギャルがギャッギャ騒いでいる感じが、女子高生がキャッキャ楽しんでいる風になっている。見た目とは恐ろしいものだ。
「次アレがいい!」
楽しんでいる彼女を見ていたらそれに従わざるを得なかった。むしろ否定派が私しかいないので多数決で負けているのだから結局乗るハメになっただろうが。
「え? でも伊藤さん、平気?」
聞いてくれるだけありがたい。さすが今や学内で人気の少年だ。
「乗っちゃえば変わらない」
それに比べてこの野郎は……。
「いいよ、乗ればいいんでしょ」
覚悟を決めて、まだ長蛇になっていない列に並ぶ。
何が嫌いかって、この待ち時間である。長蛇になっていないにせよ、30分は待つらしい。直射日光が当たる場所で良くも待てるものだ。寒ければいいのかと言われると否である。
「大丈夫? すごいそわそわしてるけど」
「大丈夫よ、このくらい」
ものすごいスピードで落ちていくカート。それと共に出る叫び声。恐怖を煽っている。心拍数は既にピークである。ホントに30分もつだろうか。