2ー24
説明したところで気まずい空気は変わらなかった。きっと絵理ちゃんも香川くんが来ることは聞かされていなかったのだろう。しかし、2人とも状況が判断出来ているのか、嫌がることも帰ることもせずに、園内に入ることになった。
園内はより賑やかだ。休日のため親子連れが多い。それだけでなく、スタッフさんが色とりどりの風船を気球の様になるほど持ち売り歩いている。直射日光が強い今日の様な天気であんなことするのは中々の苦行だろう。大粒の汗を垂らしながら笑顔で配っているのが素晴らしく美しいと感じた。
「えっとー」
森谷くんは入口で貰った地図を眺めながらまず何をしようか悩んでいるようだった。私はそれをのぞき込む。直ぐに目につくのは絶叫系のものばかりだ。出来れば避けたいそれらの横にメリーゴーランドと言う文字が目に入る。
「まずこれがいいなー」
色目を使いメリーゴーランドに指をさす。
「え? これじゃねーの?」
そこに香川くんが絶叫系で最も怖いらしいそれを指さす。
「どうしようかなって」
「まずさ、ならさないとさ」
「暑いんだし、これでよくね?」
「こういうのはさ、後の楽しみでさ」
譲らないし譲ってはくれない。どう言いくるめようか悩んだ矢先に絵理ちゃんが指をさしたのは、この遊園地のマスコットキャラクターであるドンちゃんであった。
「私あれがいい!」
走って向かっていく彼女は女子高生と言えるような仕草であった。いや、可愛いな。
思考を戻す。私は2人見るとまぁいいかという表情を見せたので3人でドンちゃんの方へ歩いていく。