2ー13
「詳しくわからないから、こんなことしか言えないけど、逃げちゃダメだよ。それじゃなにも伝わらない」
「伝えたってなにも変わらないの。何言ったって聞かないの。この気持ちわかる?」
雷が近くで落ちる。それと同時に振り払われて駅の中に吸い込まれて行った。追うこともせずその姿を見た。覚悟した女の後悔を背負ったその背中がこんなにも痛々しいとは思わなかった。
雨が降る。空を見上げても晴れている。青い空が赤く、黒く変わり日の終わりを告げる。青天の霹靂。これは絵理ちゃんが受けたとんでもない不幸の物語。
私の小説ならそうなるだろう。現実はどうかは知らない。ただ、解決しなければならないだろう。私の直感が言っている。これは、ピリオドが訪れていない物語なのだから。
室内に戻る。息を大きく吸って吐いた。今の主人公が絵理ちゃん。そのお節介役が私となる。お節介役がまずやることは、どんな事件なのかを読者に知らせるために、本人に聞く。その事件の渦中にいるのは2階いる香川くんしかいない。初対面で申し訳ないけど、抉らせて貰おう。私は隠し持っている、メモ帳とペンを取り出す。戦闘を行う武器として剣や槍、拳銃にロボットが有名なところだが、私の武器はこのふたつである。私はこれで戦う。
2階に上がると何やら困った顔をしているともちゃんが私に視線を向けた瞬間に手を振る。
「どうしたどうした?」
ゆっくり近づいていくとともちゃんが香川くんを指さしてこう言った。
「この男最低だよ!」