2ー11
店内は冷房が程よく効いている。まださほど暑くないが心地よい室温になんとなく心が癒される。
店内は意外と混んではいたが席の心配をするほどでもなく、ショーケースのケーキを眺めて何を買おうか悩んでいた。
「いいよ。みんな分払うよ」
そう言う森谷くん。高校生の分際でよくそんなこと言えたものだと思う。と考えた後で私の長財布の中に入っている一万円札2枚がとてもおかしく思えた。
「無理しなくていいよ」
「そうそうー。早紀ちゃん金持ちなんだぞー」
ともちゃんがそう言うとマンゴーベースのカフェラテとミルクレープを頼む。それに続いて私は冷たいカフェラテとチーズケーキを頼んで絵理ちゃんの注文を促す。
「私が払うから頼んでいいよ」
「カフェモカチョコ多めとショートケーキ」
イライラしているのか、お礼も特になくぶつけるように注文をする。私は戸惑いを隠せないまでも財布から一万円札をさっと出す。
「イケメン会計ですね」
「苦しゅうない、ちこうよれ」
さっと扇子を広げ仰け反る。そのジョークにともちゃんがわしゃわしゃ楽しむだけで、ピリピリしている感じが張り詰めたままだった。
品物を受け取ると2階に広い場所があり、そこを占領する。トレーを机に置いてソファー席に迷いなく進んで座る。それに続いて女性陣はソファー席に並び、反対に男性陣が並んだ。まさにお見合いと言った感じだろうか。
「まぁ、初対面の人もいるかもしれないから、自己紹介から始めるね。僕は森谷雅美。バスケ部に入部しました」
それに続いて私が行く。
「伊藤早紀。特に好きなことはない。部活もやってない。好きな食べ物はタコさんウインナー」
それに反応したのは森谷くんだけだった。クスりと笑うと可愛いねと返ってきた。当たり前だ。
「秋川知子、17歳独身。菊川瑞希先生のファンです。恋人募集中」
「本気の合コンか貴様は」
「タコさんウインナーも好きです」
「好きなら作ってこいよたまには」
「いいじゃんあのくらいー」