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彼は椅子ごと窓の前に動いて窓辺に肘をつく。
「雨がすごいねー」
「こんな大雨なのに窓を開けてる人の気がしれなかったところだ」
「よく、耳を澄ませてみなよ。雨にだって鳴き声がある。それで気分がわかるじゃないか」
言われる通りに私は目をつむり、耳を雨音に向ける。
「どんな音かな?」
「ざぁざぁ」
「それが今の早紀の気持ち」
目を開けると彼はコーヒーを一口飲む。
「なにもむりやりくっつける必要はないよ。気持ちがざぁざぁでまとまってないのに、人の心配できる程余裕がないのにさ。先ず、自分の気持ちから整理しないと。そんなんじゃ、また小説に響くよ? いや、既にきたしてるのかな」
そこまで言ってきゅるきゅると机の方へ向かっていった。
「ありがとう」
「あ、もしくっつけたいとホントに思うのであれば、2人っきりにさせるしかないと思うよ」
「……わかった」
窓を閉める。ざぁざぁとしか聞こえない雨に多少苛立ちをみせていた。彼がどのように聞こえているのか知りたかった。彼の見ている世界はどうなっているのだろう。つくづく疑問に思う。
そろそろ夕飯が出来ただろう。私はパソコンを閉じ1階へ向かった。
どうやら今日は、炊き込みご飯のようだ。




