5ー52
「着いたわよ!」
猛スピードで駐車する。周りの人は大きく避け、この車を見ている。
「ありがとう」
「早く行ってきなさい。ここで待ってるから」
車から飛び出る。
離陸時間まで残り1時間。きっと余裕を持ってエントランスに行くはずだ。そう。もうエントランスに行ってしまってるかもしれない。
会えない可能性。
家族と一緒に最後の最後まで話しているかもしれない。
会える可能性。
どちらの方が高いかわからない。どちらも有り得る。こうなったら神様にでも何にでも祈ってやる。
最後に会えますように。
紳助が乗る場所は8番辺だった気がする。駐車場から1番遠い。
館内の案内図を見て最短ルートを確認。破裂しそうな肺と、もう動かない足を無理やり従えて走る。
エスカレーターをかけのぼり、大型のスーツケースの間をすり抜け、人混みを掻き分ける。
8番付近に着いた。時計を見ると10分が経過していた。さすがに行ってしまったか……。
それでも最後のチャンス。いることを願い辺りを見回す。
意外にも人が多く、いるのかいないのか判断さえ出来ない。
焦る。本当に行ってしまったのだろうか。裂ける思いを必死に堪らえる。
どこだ……。絶対にいるはずだ。私の直感。当たらない直感。
「いってらっしゃい」
喧騒の中、聞こえた声に目を向ける。その声は間違いなくともちゃんだったのだ。
人の波が視界を遮る。確認は出来ない。
また人波を掻き分けて、声の聞こえた方へ向かう。
まだ……。もう少しだけ待ってくれ。
お願いだから……!




