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5ー50
「昔っからそうよね、アンタは」
裏路地から大通り、大通りから裏路地と蛇の様に進んでいく。
「小説書き始めて、少しアンタのこと話してくれるようになったのよ。あの時は嬉しかったわ。それより前は何も言わないで泣いて帰ってくることが多かったから。
でも、小説書くことでよりその中に気持ちを込めて出さなくなっちゃったわ。年頃の女の子がなんの恋沙汰ないなんて考えられないからね。
なにで迷ってるのかなんて知ってたけど、聞けばいい友達がいっぱい居るって聞いたから任せてたわ」
急に何を言い出すかと思えば。そんなこと知ってる。1番私のことを考えていることくらい、知ってる。
「ありがとう」
精一杯の感謝。不器用な言葉かもしれないけど。
「その言葉は間に合ってから言って欲しいな。その方がやる気出るわ」
「……うん」
「さて! 頑張れ私!」
間に合え!
みんなの想いを受ければ受けるほど、溢れる自分の気持ち。たった一言でいい。
間に合ってくれ!