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5ー49
「ごめんねぇ」
パトカーの応答に従うしかなかった。仕方がない。ごめんねの前になんでこんなに点数とるんだよあのくそどもがなんて言葉を聞いただけで私は十分だ。
そのロスタイムの影響か、道路が進まなくなっていた。
「捕まっちゃったなぁ」
溜め息を聞いた。横目で見ると、頭を抱えていた。絶望的なのだろうか。それとも、順路変更の思案でもしているのだろうか。
話したいこと。全部が全部、無理になったのかもしれない。でも、まだ望みがある。ここからどんでん返しが起こって、ギリギリで間に合って最後に一言、言えるのかもしれない。
きっと主人公だったらそう思うのかもしれない。私はまだそんなことない。駆け出しの主人公だ。
「ムリならいいよ……」
車はもう止まっていた。平日の一般道路を舐めていた。進む気配さえない。
無理なら無理と言って欲しい。もとから諦めていた事なのだから、これ以上傷つくこともない。
「なぁに言ってんの」
急に進みだした。近くの裏路地に入り爆走を始める。
あまりに急だったので窓ガラスに頭をぶつけた。