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5ー47
歩いて10分の道のり。こんなに長いとは思わなかった。走っても走ってもまだ駅周辺。まだ出ないでくれ。言いたい言葉があるんだ。
駄菓子屋の角を曲がる。やっと半分。
運動なんかからっきしな私。もう心臓が爆発しそうだし、足は動くことをやめようとしてる。
それでも、走るのをやめない。
やめたくない。
いまさらなんでこんなに熱くなってるのかわからないけど、最後、最後だって思う程にどんどんあいつへの想いが膨らんでいく。ダメだと思えば思うほど、欲しくなる。
自宅に着いた。
アイツの家の前に来た。
そこにはもう、誰もいなかった。
「間に合わなかった……」
涙が溢れでてくる。本気の想いが砕け散るとはこの事だ。本気の告白が失敗するとこんな気分になるのだろうか。
「くそっ……」
やりきれない気持ち。一言だけで済んだのに。そう思うと実行しなかった臆病な自分に憤慨する。
馬鹿だ。本当に、なんでいまさらこんなこと思ってるんだろう。
ずっとずっと好きだったのに。馬鹿だ。