5ー46
誰もが主人公。そんなこと、あいつも言ってたな。
誰もが平等に幸せで辛くて生きている、と。
「だからって、」
「つらくないの?」
ドキン。
本当に痛いとこつくよなぁ。
「つらいよ……」
ズボンを掴み歯をくいしばる。
「でも、これがいいんだよ……」
私の感情が、抑制していたものが溢れようとしていた。
「私の本音でみんな傷つくじゃんか。それならサブにだってなるよ。でもそれだけじゃない。本気で応援したいと思ってるし……。だから……」
「少しくらい本当の早紀見せてよ」
本当の? 私?
「いつも2番手で誰かの残りを貰うようなそんな人生やめろって。絶対に後悔するよ。いやしてるかもだけど」
後悔……。今でもしてる。何故いってらっしゃいくらい言わなかったんだろうって。でもそれは懺悔で……。
「傷つけてもいいじゃん。誰も傷つかない道なんてないんだから。マジで親友だから、仲間だから、なんでも知りたいしふざけあいたいし恋バナしたいし喧嘩したいし……」
私は私なりにエゴで動いてきたはずだった。それはエゴでなくてただの逃げだった。現実から目を避けるためだけの、防衛本能だった。
心に染みる。今まで無意識下ながらやってきたことを全て否定されているのだから当たり前だが、そうじゃない。
あれだけ強気で頼りがいがあって行動力抜群の我らが特攻隊長がその涙を見せている。
本気なんだ。本気で私のことを……。
「最後に1回だけ……聞くよ。戻る? 一緒に電車に乗る?」
私の本音。なんだろう。
考えよりも足が直ぐに動いた。振り返って来た道を猛ダッシュ。ありがとうも言わないでそのまま……。
間に合え、間に合え!
これが最後でもいい。
紳助が好きなんだ。