5ー44
泣きに泣いて、なんで泣いているのかわからなくなって、彼を見た。
「大丈夫か?」
その言葉にまた涙が出てくる。そんな私が嫌で、嫌な私はこの機会に高揚する。
いつの間にか彼の唇を奪っていた。
なんであんなことしてしまったのだろう……。
溜め息しか出ない。
直ぐに逃げられた後にともちゃんが目に入って我に戻ったけど、既に遅かった。悲しそうに抱き合っている私たちを見ている彼女。
せっかく仲直りできそうだったのにあれ以降また話せていない。
私から話に行けばいいのだろうけど、相変わらず勇気を振り絞れないでいた。
なーにやってるんだろう……、私。
そんな訳で、紳助の合格祝いも、おわかれの挨拶もできないで、特に行く必要の無い総合の授業で埋め尽くされた学校へ向かうのだ。
携帯を見る。そろそろ出発だろうか。これで当分はともちゃんに気を使うことなく、穏やかに生活できるだろう。
さて、駅にも着いた。電車に乗ってしまえば悔いても踏ん切りが着く。泣く必要なんてない。だって、永遠に会えないわけじゃないから……。
定期を取り出す。改札を通れば、後ろ髪を引かれるこの感じもなくなるだろう。
胸が痛い。強く締め付けられるような痛み。
病気かしら。病気ならなおさら行かなくて済むからいいのだけど。
いつもいつも、後1歩で決断ができない。弱虫だよ私は……。
「どこに行くんだい?」
私が悩んでいるときに、なんで君はそこにいるのか。
「学校に決まってるじゃないか、ちーちゃん」
無感情な彼女の表情は、私の心を読もうとその表紙を開いた。