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パソコンを閉じた。
そろそろ学校の時間である。行かなければ。
窓の外は慌ただしくしている。いつにも増して賑やかである。
制服に着替えて直ぐに家を出る。お隣さんの家の前には近所の人たちがわんさかいる。相変わらずだな。
無視をするように駅へ足を向けた。
駅前の本屋には開店前だと言うのに長蛇の列である。まぁ、それもそうか。
今日は菊川瑞希の新作発売日である。
久しぶりのため、長作かとの噂が流れていたがそんなことない。今回は1冊である。
これでも結構な自信作である。
ファンの感想が怖いようで待ち遠しい。
春の香りのする風が大通りを抜けていった。セットした髪の毛を崩すまいとおさえる。
その瞬間、見覚えのある人が反対方向へ足早に向かって行った。怖い顔をしてどうしたのだろうか。
溜め息を吐く。
数日前の私はなんて思っていたのかなんて、忘れたいはずだったのにな。