5ー41
何を言ってるんだろう……私。
抱きつきにたいのに大きな胸で泣きたいのに頭を撫でて欲しいのに強く抱きしめて欲しいのに優しい言葉が欲しいのにずっとそばにいて欲しいのにキスしたいのに……、
ーーーー私は何を言ってるんだろう。
脳みそが無数の欲求を一斉に突き出す。宙に浮いた思考で混乱している。バカみたいだ。
紳助が心配そうに私を見ている。早くともちゃんの方へ行って欲しい。これじゃぁ生き殺しの様なものだ。我慢の苦しみしかない。
「何言ってんだよ」
私を包み込む温もり。
「早紀が心配なんだ」
混乱が破裂する。
彼はともちゃんの彼氏で、私はともちゃんの友達で、世の中の原理的に私と彼の関係は浮気で、それはとてもいけない事だからやめさせなきゃいけない。けれど私はこのままがよくて、むしろ好きで、奪いたいくらいなのに、それでもともちゃんも大切で傷つけたくなくて、なのに我慢できなくて、でも守らなければいけなくて……。
キャパを超えた脳内に堪らずボタンを押した。
本音のボタンを……。
「こわ…………、こわかった……。ごわがぁっだよぉおぉ。こわかっ、たよぉ!!!!!」
優しさに包まれて、欲求をひとつひとつ満たしていく。
なんでもいい。法が私を裁こうとも、人から白い目線を受けようとも、
紳助と2人ならなんだっていい。
妬まれようと、忌み嫌われようと、私の世界には2人だけで、今も昔もこれからも変わらず、
ずっとずっと……。
一緒に、一緒に……。
生きていきたい。
心の奥底で思う。
それが私の本音……。
ずっと私を悩ませていた、虹の先の意味がわからなくても平気なんだって……その時に思えたんだ。