5ー40
ゴン!!
鈍い音だけが私の五感を刺激した。
消去ボタンを押すタイミングのはずなのに唇に変化がない。
明らかにおかしい。私を取り巻く全ての感覚がフリーだ。
今現実に何が起こっているのか知りたくて目を開ける。
真っ先に目に入ったのは校舎。視界からアイツが消えている。
ーーーーなに!? 何が起きたの!?
私の目の前にサッカーボールが落ちてきた。
ボールは気絶しているアイツに当たると、どこかへ転がっていった。
まさか……。
パトカーの音が校内に響き渡る。あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。国家権力を振りかざす者の登場で全ての終焉となるだろう……。
しかし、肩をなでおろすことも出来ずに、振り返る。絶対にありえない仮定を候補から外すために。
校庭。見慣れたその広大なフィールドの端に彼は立っていた。
そう、ーーーー紳助がーーーー
こっちに走って来る。ここにいるはずのない紳助が。
なんで、どうして……。
そんな考えよりも湧き出す安心感と助かった安堵感が全身の力を奪いその場に崩れる。
パトカーや装甲車が校庭内に入ると直ぐに武装部隊が出てきてバイクを全て破壊し、校舎を囲んで中に入って行った。これから校内の浄化が始まるようだ。
それにしても、やけに静かだな……校内は。
「大丈夫か? 早紀」
「…………私は平気だから……。ともちゃんの方に行きなよ……」