5ー38
ともちゃんは華麗に宙を舞う。
綺麗な放物線を描いて……。
地面に倒れると、彼女はそのまま動かなかった。
まさか……、死んだ?
そんな……。
「はは……ハハハハハハハハ、アハハハハハハハ! こりゃ傑作だ! こりゃ……傑作だ!!」
私の拳は赤く腫れ始めていた。他人を思うが故に、自分のその傷がわからなかったのだ。
逆に、それだけの力で殴ってしまったことになる。
「さぁーて。そろそろ飽きたからさ、早紀ちゃん、誓いのキスの時間だよ」
荒れる感情を抑えきれないでいる私に、追い打ちをかけるように近づいてくる。
「てめぇ!! これ以上は……!」
「香川くん! 来ないで! 絵理ちゃん抱いてあげてて……」
本当に私は馬鹿なんだろうな。
立ち上がりアイツを殴ろうとしている香川くんを止める。
覚悟はもう決めた。
「ほぉ、やっと諦めたの?」
「なんでもしてやるわよ。その代わりに、全員ここに戻して。そうじゃないと受け入れない」
「…………。まぁ、いいだろう」
舌打ちをすると、アイツはサッカーボールを校庭の方に蹴る。
「あぁ! ウゼェボール!」
唯一、アイツにダメージを与えたものだ。そりゃそうもなるだろう。
持っていた拡声器を口元に持っていく。
「てめぇーら。……もっとやれ」
「うぉーーー!!」
え? 嘘でしょ?
そんな馬鹿な!
「交換条件はお互いが同じ立ち位置の時にすることだ。お前の言葉なんか受ける必要なんかこれっぽっちもねぇんだよ!」
なんで!?
私はどうしてこんなにも馬鹿なの!
「ほら、誓いのキスだ」
ゆっくりと、アイツは私に近づいてくる。