5ー36
「えっ……」
「出来ないよなぁーそりゃーなぁー」
植木がなぎ払われ、美しく学校を色飾っていた花壇は全てがぐちゃぐちゃになる。
「友達だもんねー!!」
汚く笑うアイツを睨む。
「別に恨んでくれてもいいよ。ムカつくけどね」
そう言って立ち上がろうとしている香川くんの元へ行き、力強く蹴り飛ばす。
「やめて!!」
もう一度蹴ろうと足を上げた時に木の影から絵理ちゃんが出てきて香川くんに覆い被さる。
「これ以上はやめて!」
「久しぶりじゃん。オレの元カノ」
クスクスと笑い始めて大きく声を上げる。
「絶好の眺めだよ!」
上げた足を思いっきり振りぬく。
それは見事に絵理ちゃんの腹部に当たる。
「クソ野郎!」
「ダメ! ダメ、殴っちゃ!」
情けもなしにまた蹴る。
「あははははは!! 堪らない! 堪らない!」
また蹴る。
また蹴る。
また蹴る。
「やめて……」
それを止めたのはともちゃんだった。アイツの肩にそっと触れる。
「さっきっからウゼェな!」
固く握られた拳を顔面目掛けて放つ。
それを軽々と避ける彼女の目は、獲物を狩る豹の目だった。
「こ、このくらい避けたぐらいで!!」
また殴ろうとしたが、アイツの目はしっかりと私を掴んだ。ニヤリと口をゆがませ、片足を絵理ちゃんに乗せる。
「そう言えばまだ楽しそうなの見てないね。早紀ちゃんがコイツを殴らなければ、3秒で1発この女の子を蹴ろうと思いま〜す」
「え!? ちょっと待っ……」
「いーち……」
嘘でしょ……。そんな……。
「いいよ。私なら平気」
「でもそんなこと……」
「にーぃ」
時間がない。でも殴れない。そんなことできない。
「私なら平気だから! そんなことしなくていいよ!」
「うるせぇ! 黙ってろ!」
1発目。
私は……。私は……。
「ったくウザってぇな。いーち」