5ー35
「そんなことさせないよ」
この声は……!
「あ゛!?」
「ともちゃん!」
手が離された。重力に従って地面に頭を打ち付ける。
「なになに? 友情ごっこですか?」
1人でアイツを睨んでいた。武者震いなのか、足を震わせてそこにいる。
「ごっこなんかじゃない」
「はいはい。そんなことどうでもいいんですよ」
アイツはともちゃんの目の前に立つ。
「ダメ! 殴るなら私が!」
「いいよ。オレのものになるなら」
クソ野郎!
「いいねー、その反抗的な目」
手を上げるアイツを止める方法なんてひとつしかなかった。
「言うんじゃねぇよ! 私が出てきた意味がわからねぇじゃんか!」
「わかったわよ! なんにでもなってやるよ! あんたの……」
次の瞬間、校内放送が鳴り響く。
「ゴミ共が邪魔してんじゃねぇ!!」
ノイズだらけの言葉に一瞬怯んだ。
それは私だけでなくアイツも同じである。
「んだとゴラ!」
「なめとんのかアマ!!」
バイクのエンジンが怒涛に吼える。
「てめぇらいなきゃ世の中平和なんだよ!」
サッカーボールが足に転がって来た。顔を上げるとアイツは倒れていた。
「すまんすまん。すっぽ抜けたわ」
全く……。私の周りの人はなんでこうも……。
「カス野郎が!!」
「人間のクズに言われたくねぇよ」
2人は半ば取っ組み合う。
「ちょっ! まだ終わってなっ!! やめて!」
ちーちゃんの声が放送を終えるように消えていった。
香川くんが殴られる。勢いよく吹っ飛ぶ。
「あぁ、もうキレた。てめーら。滅茶苦茶にすんぞ」
その言葉を待っていたのか武器を取ってバイクから降りる者。バイクを乗り回す者。
事態が最悪だった。これじゃ、学校が潰れちゃう。
「お願いやめて! 私なんでもするから!」
香川君に追い打ちをかけようとするアイツにすがりつく。
「それなら、この女を殴れ」
アイツが指さしたのは、誰でもない、私の親友だった。