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虹の先  作者: kazuha
虹の先
182/211

5ー33

「なに馬鹿なこと言ってんだよ!」

 後ろからの声に振り返る。戻って来たちーちゃんが鬼の形相で私の近くに寄り、胸ぐらを掴む。

「後5分も待てないのかよ!」

「ムリだよ」

「なんでそうなんだよ! 自分の身がどうなったっていいって思ってんだろ!? そんなことさせねぇよ!」

「これ以上、私のせいで傷つく人を見たくないの!!!」

 激情。体中が熱い。私、怒ってるんだ。

「あと5分、私が繋げばいいんでしょ。そうすれば無駄な争いは避けれるんでしょ」

「それこそ無駄な足掻きだ! いいからここに……」

 掴まれていた手を叩くと身が自由になる。それを好機とちーちゃんの横を優雅に通る。

「もう……、決めたから」

 そのまま入口まで行き、振り返らないで出ようとする。

「やだ」

 手を引かれ止められる。

「まだなにも決めてないよ。……なにも、決まってないよ」



 …………。




 無言の圧力。



 私も……、彼女も……。




 決めることなんて、私にはできない。

 ともちゃんの人生も、アイツの人生も。

 自分だけで精一杯なのだから。

 夢もなく成長もなくただただ誰かが引いたレールの上を短調に進むだけの私に、行き先を決めるなんてできないんだ。

 せめて、死に際くらい決めたい。

 そう、せめて……。



 手を振り抜いた。

 そのまま教室を出ていく。

 皆、口々に私の名前を叫ぶ。止められないとわかっていても。


 こわいな。

 殺されちゃうのかな。

 それともあれやこれやとさせられるのだろうか。

 臓物を取られて身ごと売られてしまうのだろうか。


 無根拠な推測。私の脳内を埋めてもなお足は止まらない。

 上履きのまま外へ出て、顔を上げる。

「やっと来たね」

 やっぱり怖い。できるなら、逃げたい。

 それができないように黒い恐怖が私をしっかりとロックする。

ーーーー森谷雅美ーーーー

 歪に笑うその顔は、この世を追放された悪魔のようだ。

「覚悟はできてんだろうな!」

 震える体をなでおろして口を開く。

「あんたこそ、覚悟できてるんでしょうね」

 宣戦布告。

 地獄の開始。

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