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珍しく授業に集中できなかった。寝不足が原因かも知れないが、この異常な心音が最も原因なのだろう。緊張と言うかなんと言うか、このソワソワ感がとても邪魔だ。
「あのさ! さっきのなに!?」
終わって直ぐに後方を向き人差し指を目の前に叩きつける。それに驚いた森谷くんは片付け終わっていない教科書を放置し私を見てニコッと笑う。
「なにって、来週遊ぼうよってこと」
「いやいや、なんで私なの」
「んー、なんでかな。興味がある」
その言葉に集まり始めていた女子たちが悲鳴じみた声を上げる。いや、そもそも私が唖然としている。
「いや、なら友だちも誘っていい?」
「あ、いいよ。オレも何人か集めて見るね」
この瞬間、名も知らない女性達が手を上げて、私友達ですと口々に言い私にも言い寄ってくる。私は溜め息を吐いて、トイレへと向かう。
時間を見計らって教室へ戻る。その途中で私に向けられる女子の視線がやけに痛い。
教室に戻っても同じように白い目というか赤い目と言うかそんな感じに睨まれている。思わず視線を避けながら席に戻る。
「さっきの、よろしくね」
小さい声で言わなくてもわかっている。それよりなんで私、嫌だっていわなかったんだろう。そう考えると自分に嫌気が差す。断れない女なのだ。仕事でも、プライベートでも。