5ー30
「きゃー!!!」
怒号の如く悲鳴が上がる。私は驚いて席を立ち上がり、怯えた気持ちで事の状況を見回す。
隣の教室でもどうやら同じことが起こっているようだ。同じように悲鳴と逃げる足音が聞こえる。
割れたガラスは1枚だけではない。ほぼ全てが大きな石で割られている。窓に近かった男子のひとりが頭から血を流して気を失っている。周りの男子はそれを見て怯えてなにもできないでいる。
「なにやってんだよ! 手を貸せ! 保健室に運ぶよ!」
それにいち早く対応するのはちーちゃんだった。ちーちゃんの一言で男子達は我に返り急いで倒れている子を持ち上げ教室を出ていった。
本当に勇気がある。こういう時でも。
……事の元凶は誰だ。こんな事をする輩はなんてほぼ決まっている。
組織ぐるみで行える統率と実行する破壊心。そして、この声だ。
「聞かないで!」
それはムリな話だよ。拡声器使って私目掛けて言って来ているのだから。
窓に近づく。まだ逃げていない女子たちが私の事を睨んでいる。まぁ、そうだな。全て私のせいだ。
割れた窓の先を見る。
冬のお昼時。まだしっかりと照り返しているはずの光が、黒い集団によってクレーターの様に穴が空いているようだ。