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5ー29
そんなことはない。そんなことはない。
私も悪いけど、彼女も悪い。
喧嘩両成敗。
昔の人はやはりいいことを言う。全部を平等化できるものなんてそうそうない。
彼女の足が私を向く。今か。
勝負をつけに、単騎で乗り込んでくるようだ。
この数秒で心の準備をする。
「これで終るはずだ……」
独り言。唯一緊張を紛らわせる方法。
溜め息……。
怖い。
静かに目をつむる。無音の世界。雑音が耳を通らない。極度の緊張が私をより冷静にさせた。
全て受身に、全て流れに、全て決着に。
「ーーーー早紀ちゃん……………」
ゆっくりと目を開け、菊川瑞希の小説が目に入った後に、彼女の顔をしっかりと見る。
ーーーーその瞬間だったーーーー
ガラスの割れた音がこの教室をかけ巡ったのは。