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5ー26
「学校行かなきゃ」
「うむ、行ってきなさい」
お母さんの手をすり抜け部屋に戻る。
扉の先は散らかっている。酷いものだ。
部屋中にばらまかれているのは減ってしまったファンレター。それでもかなりの量がある。1つ1つ拾い上げながら差出人を見る。
「あ、この人……」
必ず毎回送ってきてくれる人がいる。そういう人が本当の菊川瑞希のファンだ。小説家に成り立ての頃編集の人がそう言ってくれた。そんな人を作れるように頑張れ、と。
「この人もだ」
何人もいる。あれだけ評判が悪かったにも関わらずだ。失望した人も何人かいただろう。
嬉しい。心から思う。そして、次も書かなければと。
片付け終わると支度を始じめる。
しっかりと面白いものを書けるように、頑張らなきゃ。
制服に着替え、リボンを付けながら強く思う。
「よしっ」
気合を入れて鞄を持ち、学校へと向かう。