表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の先  作者: kazuha
虹の先
174/211

5ー25

 ふと冷静になり、彼から離れる。

「その、……」

 つい吃ってしまう。いつも通りでいいのに、一言でいいのに、私はそれ以上の事を望んでしまっている。

 しかし、それにはあまりにも準備不足だった。

 不意に彼の手が私の頭に触れた。優しく撫でる仕草を嫌がるが、離してはくれなかった。

「やめてよ」

「いいだろ。気合い入るんだからさ」

 何を訳のわからないことを言うのか。

 視線を上げる。その眼差しは余りにも気合いが入り過ぎていて、直ぐにでも壊れてしましそうだった。

「……頑張れよ」

「おう。もちろんだ」

 爽やかなハニカミが愛おしく思う。

 離したくはない。渡したくない。私のものだったそれ。

 頭を撫でる。背伸びをして仕返しと言わんばかりに優しく。

 紳助ならできる。

 頑張れ。

 頑張れ……。

 それを言葉にできたらよかったのに。なんて私は弱虫なんだろう。

「ありがとう」

「うん」

 彼は後ろを向くと車に乗り込んだ。

 彼の乗った所の窓が開き、手だけが出てきてピースをしてきた。

 手を振る。発車した車に、曲がるまで見えるように大きく。大きく……。

 姿が見えなくなると、激しい鼓動を叩いていた心臓に手を当てた。

 苦しい。なんだろうこの感覚は。恋なんだろうか。これが。

 お母さんが肩を優しく叩く。

 大丈夫だよ。

 私にそう諭すように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ