5ー24
外はちょっとした引越し状態だった。近所の人が集まって紳助の頭を撫でていた。なんかのお呪いだろうか。満更でもない顔で挨拶をしていた。
「ほら! アンタも行きなさいって!」
「だから別にっ!」
拒んでいるのに、このおばさんは背中を強く押してくる。人の気も知らないで。
「頑張れ、だけでいいんだからさ」
「耳元で呟くな、気持ち悪い」
ムッと怒った効果音を耳にしたと思うと、力いっぱい押される。転けそうになるのを必死に堪えていたら、何かに柔らかいものに当たった。
いや、……受け止められた!?
嫌な予感が、して、すぐに顔を上げる。
「し、紳助!?」
「あぶねぇな。気をつけなさい」
これは事件だ。1番起きちゃいけない位のやつ。
アリとキリギリスで働きアリのした事が全て無駄になり、キリギリスが生き残ってしまうくらい起きちゃいけないやつだ。
「あら、後はお若い人同士、水入らずで」
なんていらない気を使う近所の人達。最後に一言置いていってどんどん居なくなる人達。
「いきなり飛び込んできて、どうしたんだ?」
人がいなくなり、気まずい感覚を感じていた。それは私だけのようで、彼はそんなこと無いようだった。