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5ー23
朝か……。
結局、一文字も書けなかった。
ベッドの上でうじうじと体を動かし、大きく息を吐いた。
今日も学校か。行きたくないなぁ。
重たい体を起こし、洗面所へ向かう。
入ってすぐ目の前にある鏡を見る。
「酷い顔」
目は腫れ、涙の後で顔がぐしゃぐしゃであった。
一先ず顔を洗い、腫れた目を誤魔化す為に伊達メガネをかけた。
歯を磨きながら櫛で髪をある程度整えていると急に扉が開かれた。
「ちょっとあんた! しんちゃん行っちゃうよ!」
行っちゃう? どういう事だろうか。
口をすすぎ、タオルで拭く。
「どこに?」
「どこにって、試験会場よ。明日からでしょ? 宿を今日からとっているからお母さんと一緒に行くんだってさ」
そうか。今日か……。
「いいよ。別にこんな時まで私の顔見たい訳じゃないだろうし」
「なに馬鹿なこと言ってるの! 頑張ってくらい言いなさい!」
まだボサボサの髪のまま連れていかれる。
心の準備なんてできる訳もないまま。