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虹の先  作者: kazuha
虹の先
171/211

5ー22

 途端に力が出なくなりその場に座り込む。

 いつの間に立っていたのかなんてわからない。怒りなのか恐怖なのか、血が騒いでいた。

 怖い。

 私、どうしちゃったんだろう。

 友だちを失って、

 彼を失って、

 小説さえ失おうとしている。

 全て失っても私は私でいられるのだろうか。

 私、伊藤早紀はこのままでいられるのだろうか。

 そのうち、私の中の菊川瑞希が暴れだすのではないか。

 そんな恐怖が日々増していく。


ーーーー私じゃない私が怖い。


 どうすればいい。

 私が私のままでいられるには。

 誰かが答えてくれるわけじゃない。

 私が……、私が考えなければ。


 次の小説を、書かなければ。

 唯一、私らしくいられる居場所はそこにしかない。もうそれしかないのだ。

 どうしたら書ける。キーボードは触れない。他の方法は……。

ーーーー紙だ。

 バックからルーズリーフを出し、机に並べてシャーペンで自分の名前を書こうと芯を出す。

「なんでなんだよ……」

 芯が紙につかない。文字も書けないのか私は。学校では書けるのに、どうして、どうして……。

 涙がルーズリーフに落ちていく。

 こんなに簡単に、紙に色を与えられるのに、私の手はそれを許してくれない。

 昔みたいに、またモノクロの世界が目の前には広がっていた。


 菊川瑞希が小説を書けなくなった日。それは誰にも知られない私の歴史だった。

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