5ー13
……。
後ろを振り返る。窓に背を付ける。
「ありがとう。でも、……平気だから」
胸がキリッと痛む。目頭が熱くなるのを我慢する。
「ならよかった。落ち込んでるように見えたからさ」
「変わりやすいのよ、山の天気みたいに」
鼻で笑われた。変なことでも言っただろうか。
「常にそんな感じだけどね」
「バカにすんな」
寒くて腕を摩する。溜め息も白い煙となって直ぐに消えた。
「寒いだろ。明日も早いだろうしさ」
そろそろ戻りたいのかな。私はまだ、話していたいけど。
最後に、ひとつだけ聞きたいことを聞いてからでも、いいよね。
「最近、上手くいってる? 彼女と」
小さな声でも聞こえるように少しだけ彼の方を向いて言葉を出す。
何聞いてるんだろう。自分でもそう思うくらいバカみたいな質問だ。ただ闇雲に自分を傷つけるだけなのに。
「……そうだなぁ」
ほらやっぱり困った。わかってただろう自分。
「別に言いたくないならいいよ。少しだけ気になっただけだから」
そろそろ窓を閉めようかな。
窓から背中を離す。
「あんまり上手くいってないな……」
思わない言葉が返ってきた。返答があった事も驚きだが、まさか上手くいっていないなんて、様子からは全くわからなかった。
皮肉にも、嬉しく思ってしまった。
「クリスマス近いのに、オレも勉強忙しいからって彼女のこと後回しにしてたら怒っちゃってさ」
どんなカップルでも些細ないざこざはあり、人に見えない程度にケンカしている。
「少しくらい待ってて欲しいけど、流石にほっておくのは話が別だなって反省したよ」
それを羨ましく思うし、欲しく思う。
その相手が、いくら妄想してもたった一人の男性でなければ、この話も笑って聞けたのかもしれない。
「そろそろ寝るね」
「おやすみ。いい夢見なよ」
窓を閉めると直ぐにベットにダイブする。枕に顔を埋めて声を殺す。
聞かれちゃダメだ。絶対に、絶対に。
今までの我慢が水の泡になる。
絶対にダメなんだ。
例え、私の羞恥を聞かれていたとしても、絶対に好きだなんて悟られてはダメなんだ。
知られたらきっと、今の関係が全て壊れる。
そんな気がして。