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5ー7
連れて行かれた場所は、悪いイメージしかないその場所だった。
体育館裏。
何故ここを選んだのか。私への嫌がらせなのだろうか。
彼女はある程度の所で止まった。
「それで、話したいことって何かな? 絵理ちゃん」
彼女はグラウンドから響く黄色い声援を嫌うように眺めている。自分の彼氏が他の女の子に振り向かない可能性なんて誰も否定出来ない。だからこの一瞬でさえ、彼から目を離すことがとても怖いのだろう。
「あの日のこと」
静かに呟かれた言葉に記憶を廻る。
「ずっと気にしてたの。凄く、心苦しくて」
振り返り、今にも泣きそうに顔を歪めている彼女を見るとあの日のことを思い出す。
「でも、そう言う事じゃない。今日は違うの」
制服の袖で顔を擦る。浅い呼吸で深呼吸する。
「早紀ちゃんの気持ちを聞きに来たの」
それはなんなのだろう。どういう事なのだろう。
「私がそうだったように、相談くらいは……」
「余計なお世話」
くだらない。そんなことだったのか。
「でも!」
「そんなのどうでもいいじゃない」
「よくないよ! 2人が……、ケンカ……してるの……見たくないの!!」