2ー2
そんな予想は見事に的中する。夕立の季節にしてはまだ早い、梅雨の雨だ。雷が鳴ったと思えば帰宅前の私たちを襲う豪雨。折りたたみ傘なんか持たない主義の私にとって学内待機は至極当然の選択だった。
ちーちゃんは人知れずバレー部に向かい練習に励み、ともちゃんはバスケ部にでも行って森谷雅美に黄色い声援でも送っているのだろう。
私は教室に居座り、スマホで小説の内容を書きながら雨が止むのを待った。何故か教室に誰もいないのが不思議だがそれは好都合だと話を紡いでいく。
病弱の少女は学内で1の青年に恋をするがそれを告げないでいる。病弱である少女は自分の死期が近いことを悟り、それでも青年を見ていたいと無理を言い学校へ通う。時間は残酷に刻まれ青年との時間は徐々になくなっていく。少女は諦めようと考えた。自分の恋は、恋に恋をしているのだと。一目惚れというその現象はまやかしだと。
「そんなことない。君が生きた時間はなによりも素晴らしく無駄ではない。君の感じる美しい感性は皆を虜にした。それさえもまやかしだと言うのであれば、僕は君を記憶することができないだろう。しかし、君はここにいる」
私はスマホを机に置いた。
「勝手に人の思考に入り込んでくるな。鬱陶しい」
「いや、今日は綺麗にお話し書いてるなと思ってさ」
豆乳のパックを飲みながら近づいてくるその男を私は睨みつける。
「飯田先輩。学内で近づくなと言っただろ」
「いいじゃんか。どうやら今日転校してきた子に女の子取られちゃって身動きが軽いんだからさ」
私は深く溜め息をつく。