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虹の先  作者: kazuha
依々恋々
144/211

4ー36

 また読めと言うのだろうか。全くこりない人だ。

「だーかーらー」

「ホントにそれでいいの?」

 そう言われて思わず彼女の顔を見てしまった。その目はまっすぐ私を見つめていた。嫌な目だ。まるで私を見透かしているような目。

「嫌いなものは嫌い」

 ルーだけを口に運ぶ。

「いつでも貸すからね」

 急に味がなくなったんだ。さっきまであんなに美味しかったのに。盛り上がっていた気持ちも何処へやら行ってしまった。

 急いでカレーを飲み込み1人先に席を立った。

「ごちそうさま」

「ちょっ! 早紀ちゃん! なに!? どうしたの!?」

「ひとりになりたい気分」

「え? ちょっと待ってよ!!」

 早足でその場から逃げる。

 なんなんだよ。あの目は感染するのか?

 大人が子供を見下すような目。

 金持ちが貧乏人を嘲笑う目。

 政治家が老いたおじいちゃんを見るような目。

 大学教授が工事現場の人を見るような目。

 なんなんだよ! あの目は!!

 更に上の階に上がれるようだった。暗くなりつつあるこの空間を躊躇い無く進む。

 行き着いたのは、お洒落なテラスだった。

 ガラス扉を開けて外に出ると、ひんやりとした空気が肌を撫でる。

 夕焼けと闇が海を割るように美しく色づいていた。境目。人によっては様々な色に見えるそれ。瑠璃だったり葵だったり、碧だったり。

 私はそんな感性はない。緑だ。

 その色をなぞる。あの時、七色の線をひとつひとつなぞったように、その色だけを上手く指を押し当てる。

 その後何が起こったのか思い出した。

 すぐにやめる。

 私はバカなのか。なんでこんな時にまであの時のことを思い出してしまうのだ。

 あの日からだ。私が、私が、私が自分の気持ちに蓋をしたのは。

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