4ー34
太陽が山へと沈もうとしていた。空の色も変わり東の空にはもう星が見えていた。
晩御飯を作らなければいけない時間であった。
「ってことでカレーでいいですよね」
シャワーを浴びて着替えた私たちにエプロンを無理やり付けさせるとキッチンに誘導される。目の前に広がった食材を見るや直ぐに目的の料理がわかった。
「えー、私カレー嫌い」
「ウインナーは?」
「私は作らないぞ」
各々が文句を言うが、小動物のように可愛い顔が、獲物を見つけた肉食獣のように目をギラつかせる。
包丁に手が伸びそうだったので仕方なくそれを作り始める。
「じゃぁ、さきっちはジャガイモ、ニンジン、タマネギお願い。ともちゃんはここに書いてある通りにスパイスを鍋に入れてね。絵理ちゃんはお肉お願い」
案外しっかりと決めている。効率的に作るように考えてきたのだろうか。
「で、ちーちゃんは何するの?」
「テレビ見る」
近くにあったおたまを取り逃げようとするちーちゃんの頭を殴る。
「こら」
「いたーいなーもー」
堂々と逃げる彼女の顔が見える。何故か恥ずかしそうであった。
それを見て思い出す。
「あ、そうか。でも、やれ」
「このっっ! 鬼畜!」
ちーちゃんを私の隣につけると、簡単なジャガイモの皮むきをお願いした。残念なことにこのキッチンには包丁しかない。
「初めに言っとくけど、指……」
「痛っ!!」
忠告も虚しく彼女は親指を綺麗に切っていた。
ともちゃんが予想していたかのように応急手当セットで切り傷に可愛い花柄の絆創膏を貼る。
「何年前だっけ? 友チョコに血を大量に入れすぎてチョコではない味のチョコが生まれたの」
「今年です……」
思い出したくもない。あれは思い出すだけで吐ける。
「そんなにすごかったの?」
「そりゃもう。愛がこんなにも重いなんて思ったのそれがはじめてだし」
絵理ちゃんがしっかりと鶏肉を食べやすい大きさに切り分けているのを見て私はタマネギを手に取る。
「ちょっと気になるかも。そのレシピ教えて?」
「え? 気が失いそうになるまで血を入れます」
「やめろ」