2ー1
青年の評判はわかりきっていたほど容易に、尚且つ迅速に広まった。
私の席の1つ後ろの席。それが彼の席だが、私はちーちゃんの席に避難してたこさんウインナーを食べる。何故避難しているのかと言うと、私の席をも埋め尽くす程、学内の女子ならぬ恋に飢えた乙女たちが彼に覚えられようと必死にアピール合戦を行っている。その為である。
私はあからさまに面白くなさそうな顔をするがそれを気に留める人など誰一人としていない。なんたって我が友である2名はその乙女たちに含まれているからだ。
今日は心なしかたこさんが元気ない。茹でる時間を間違えたのだろうか。そんな事を気にしても食べてしまえばなにも変わらない。美味しいウインナーだ。
独りでに食事を終えた私は窓辺で恒例のごとくアイツの姿を探す。
今日は上手く見つけられなかった。
なにせ、普通の光景ではなくなったのだから。流行りが移るように、季節が移るように、時が流れるように、それは極自然に当たり前に起こるのだ。彼のファンは皆、彼に奪われたのだ。
森谷雅美という男に。
面白くなく私は空を見上げる。なんだか今日は雨が振りそうだった。