4ー28
「しらないもん!」
ぷいと頬を膨らませた。反射的にそれをつついてしまう。するとぶーと息が出ていった。
「あ、面白いかも」
「ボクはおもちゃじゃないもん!」
また膨らませるからまたつつく。
そんなバカみたいなやり取りをしていたら、真っ白いペンションの前で道路が途切れた。
「え? 道でも間違えた的な?」
あまりに豪華な家である。この国を動かしている政治家さんでも住んでいそうなほどの存在感は私を萎縮させた。
「んー……。そうかもしれないねー」
おいおい、計画者だろう貴様は。頭を抱えると蝉共の笑い声が耳障りに聞こえる。一匹残らず駆逐してやろうか野郎どもめ。
「あれー、ちょっと待ってね。連絡してみるー」
「連絡できるならさ、迎えに来てもらったほうが楽できたんじゃね?」
「いや、それはあれ。時間潰し」
ちょっと待て、私に対しての扱いがVIPだぞ。ドッキリでもあるのかこれは。
「あーもしもし? ボクだよボク。そうそうボク。え? ちょっと! ……切れちゃった」
気のせいか。デジャヴでも見ているようだ。
「もっかいかける」
「お願いだから、名前は言って」
「言ってるしー。あ、もしもしボクだよボク。さっき切ったでしょ! ねぇ! もう! 切れた……」
「変われ」
携帯を奪いリコールする。
もはやこれが狙いだとは思わなかった。
「ようこそ、我がお屋敷へ!」
はい!?
次の瞬間、3人の少女たちに目隠しされ、足を持ち上げられ、胸を鷲掴みにされる。
これは、拉致現場だ。
「きゃーーー!!」