4ー25
さっき居間へ行ったとき居なかったからきっと母は何処かへ行っただろう。仕方なく私はインターフォンを取る。
『やっぽー! 行くよ!』
耳をつんざく声に直ぐに切る。
「さぁ、作業に戻ろ」
ピンポンピンポンピンポン!
「わかったよ! 待ってろ!」
直ぐに部屋に戻り、部屋着から着替えようと服を出す。
「あ゛ー!! なんで急に来るのよ全く!」
適当に選んで着、荷物をまとめる。
ピンポンピンポンピンポン!
ったくうるさい!
急いで玄関に行き履き慣れてないヒールを出してしまう。
「いっか!」
ピンポンピンポンピンポン!
「はいはい! 今出るから!」
扉を開ける。灼熱の空気が私を包んだ。瞬間的に出る汗も驚いていることだろう。
鍵をしっかりとしてゆっくりと敷地から出る。
「もう! 遅いよ! 何時だと思ってるの!」
白い素肌を見せつけるように肩まで巻くっているTシャツには『comeback casryn』と訳のわからない単語が書いてあった。
「なに、どうしたの?」
麦わら帽子がこんなに似合う女の子もそうはいないだろうなどと下心を顕にすると彼女はこう告げた。
「ほら! ともちゃんのプレゼント買いに行くよ!」
あぁ、そんなこともあったねと納得していると彼女は私の手を取って直ぐに引く。強く引かれると慣れていないヒールのために転けそうになる。
「ちょっと! 危ない! 離して!」
「離すけど急いで!」
なんで急ぐ必要があるのか。まぁ、なにか思い当たる節でもあるのだろう。
急いで電車に乗り込む。行き先は街から外れる方面だった。
「どこ行くの?」
息をきらせながら座り足を伸ばす。
「ひ☆み☆……」
「演出の如く星を出すんじゃない! そして秘密にするな!」
「うるさいうるさい! 公共の場だよ!」
「この列車私達以外乗ってないわ!!」
ちーちゃんがキョロキョロと辺りを見回す。
平日の日中。このクソ暑い日にわざわざ外に出る人なんていやしない。
「いや! ひとりいるぞ!」
「どこにいるのよ!!」
「1番先頭で安全運転をしてくれてる佐々木さん!」
「だれ!!」
『車内終日マナーにご協力ください。禁煙、譲り合い、黙り合い』
「車掌さんも上手いこと言わないで!!」