4ー23
「心外だ。いつ無理したって?」
「毎晩遅くまで勉強してるじゃないか」
「それは自分のため」
そう言うなり私の居場所を半ば横取りするかのようにベッドに横たわる。
「早紀のやってることは、人のため」
息のかかる距離。私は寝返りをまた打ち、壁に顔を向ける。
「別にいいじゃん。世のため人のためになることが結局は仕事なんでしょ?」
「んー……。仕事って結局は自分のためだと思うよ」
世論調査をしたらきっと数パーセントしか入らない人間の台詞のようだ。社会不適合者のレッテルを貼られてしまうのがオチだ。
「そんなんでいいと思ってるの? そんなんじゃ、」
「やっていけなくなるって?」
腰に手が乗っかったかと思うと背中に彼の体温を感じた。
はっとする。近親相関張りの罪悪感。私が拒まなければいけないことだ。
「こらっ! バカ! ともちゃん怒るぞ!」
「慰めてるって言うから平気」
「そういう問題じゃないだろ!」
「オレも眠いから寝かせて」
「おい! こら!」
密着感。とてつもない密着感。彼の鼓動がわかるほど。変な緊張感に勝手に早くなる心臓。
しかし、……嫌ではなかった。
『どんなことがあろうと親友を親友と呼べるかい?』
……嫌ではなかった。
「自分の家で寝ろ! バカ!」
突き飛ばしてベッドから落とす。どん! と大きな音が響く。
「痛いなー、もう」
腰をさする彼を見て私は嘲笑うかのように鼻で笑う。
「忠実な男にしか興味ないのよ」
「それは失礼したよ」
少しだけ笑ってドアへ向かっていった。
「ゆっくりおやすみ。まだ終わってないんだろ?」
「うるさい、早く帰れ」
「……わかったよ。ガンバレ」
ゆっくり出ていった。音も立てず、すっと消えていった。
これでよかった。これで。私じゃないんだ。そう、私じゃいけないんだ。
くそ。くそ!
私はなにを考えているんだ!