4ー22
「うるさい」
つい口をついた。
「うるさい! 私は少しだけ書くのをやめるんだ!!!」
上書き保存。終わったのを確認してメールに添付。行き先は担当の人。
送り終わるのを確認もせずにベッドに入る。
「ムリ。マジムリ。寝る。マジで」
枕に顔を埋め、丸くなって寝ようとする。睡魔は私を容易に抱き、そちらの世界へと連れて行ってくれる。
「いきなり昼夜逆転生活かい? 早紀」
睡魔は死神なのだろうか、それとも天使なのだろうか……。それの判断によっては来客を恨まなければならない。
「うるさい。早く帰って勉強しろ」
「おばさんが心配してたぞ。うちの子が不良になったって」
「いい加減めんどくさがって育児放棄してるのに気付けよ」
ベッドが沈む。寝返りを打ち目を開ける。
「それはどうでもいいとして、」
「いやよくないだろ」
「どうした? 亡霊に取り憑かれたようにパソコンを殴ってるって言ってたぞ」
「その証言者に言ってくれ。タイプしてると言うって」
「それにしても酷く赤いな」
いつの間にか見ている紙。それを恥じるが何かをしようとは思えなかった。体の倦怠感が私を縛っているようだ。
「そうだよ。悪いか」
「いいや、悪くない」
私に視線を向けるとにっこりと笑った。
「壁は高ければ高い程、乗り越えた時の景色が美しく見えるものだ」
「それはどこの引用だ?」
「……とりあえず、諦めるなよ。それと、無理すんなよ」
「私の言葉に反応しろ。そしてあんたに、1番言われたくないよ」