4ー21
霞む視界。白い光がどうやら近くから入ってきているようだ。眩しい。
体が鉛のようだ。重たく、動かしたくても動かない。金縛りはこんな感じなのだろうか。
とてつもない睡魔。それは優しく私を包み込んだ。
『ねぇねぇ、やらないの?』
『楽しみにしてるよ!』
『次も面白いよね?』
『いつかなぁ……』
『絶対に読むよ!』
『早く』
『早く』
『はやく』
『はやく』
思わず起き上がる。
周りを見回しても誰もいない。
怖かった。夢だろうか。それにしてもリアルな幻聴だ。
生唾を飲む。
どうやら、机に突っ伏して寝ていたようだ。パソコンも起動したまま。直しの原稿は床に散らばっていた。
全く情けない。まだ1ページも直せていないのに。
原稿を拾い集めた。順番に並べて、訂正部分を細かく分析する。それを元に書き直そうとしても、上手く言葉が出てこない。
書いては消して、書いては消して。
どこの矛盾だ? ここはこうで、それはこう。でもこうじゃないといけない。だからこうで、そうするとこうならないといけないから……。
複雑なパズルをしているようだ。全面真っ黒なパズルを。表も裏もわからない。そんなパズル。
「さきー! ごはんはー!」
「いらない」
ノックもしないで入ってくる母に返す。いつの間にか居なくなってたが。
キーボードを叩き続ける。
『楽しみだな』
『まだかな』
幻聴が常に私を取り巻いている。