4ー20
驚愕だ。
私の知っている部活、所謂信頼関係の中で1度辞めた人間をまた快く受け入れてくれただけでも泣けるほどイイ話なのに、他の頑張って来た勇者を差し置いて長に着こうとしている。
勇者からしたら、横取り野郎、である。
「それってありなの?」
絵理ちゃんも首を傾げる。
「アイツも驚いてたけどねー」
候補。何人かの1人なのだろうけど、それでも選ばれるなんてやはり凄いことだ。
「推薦してくれたの、飯田先輩らしいのよねー」
またあの人か、まったく……。やる事なす事破天荒な臭いを醸す。
「好かれてるね」
「ホントに」
そんなこんな駅に着いた。夕暮れ時、帰宅ラッシュで混雑し始めた改札。
「本当にあの件はすいませんでした」
「いえいえ。……因みに、すみません、だからね」
「細かいことは気にしない」
いいのかそれで?
「学校の近くにできたクレープ屋、今度一緒に行こうね!」
「うん。またね」
小さく手を振ると人混みに消えていった。私も直ぐに来た道を引き返す。
なんだかんだ言ってたけど、嬉しそうに香川くんの事を話していた。それがいいのかもしれない。一生懸命に頑張っている彼に恋している乙女心。
一瞬のブレはその嫉妬だったのだろう。そう、一生懸命じゃなくなってグレてしまった彼を。
自分の理想とは違う彼に、嫌気が差してしまった。それだけなのだ。
そう、理想とは掛け離れた現実に嫌気が差した。
歩みを早める。
早く帰ろう。この添削を直さなければ。面白い物語にしなければ。ひとりで、ひとりで書き上げるんだ。絶対、絶対に!