4ー19
私をそんな風に呼ぶ人は数人だ。そう、数少ない呼ばれ方。
「随分元気になったね。絵理ちゃん」
笑みの消えていた顔は私の気持ちとは裏腹に、美しく綺麗な花を咲かせたヒマワリの様な笑顔になっていた。
「その節はお世話になりました」
深々と頭を下げる彼女。なにか悪いことをした気分になって直ぐに頭を上げさせた。
「まぁなんでもいいんだけど、なんでここにいるの?」
買い物袋もなければ、デートの様な感じでもない。そもそも、この近辺にあるのは飲食店とかそこいらで、遊べるような場所は特にないはずなのだ。
「いや、本当はさきちゃんの家に行ってお礼をしようと思ったんだけど、その前に出会っちゃったってだけ」
飽きれた。わざわざ言いに来なくても……。
「なんか、私の空回りで巻き込んじゃったみたいな……」
「いやいや、あれはアイツが悪いんだよ」
「聞いた話だと、アイツになんか脅迫されてたって。しかも私を餌にして」
間違ってはない。しかし素直に頷くこともできなかった。
「それも、私の自業自得。少しでも隙を見せたのが悪かったの」
このままだといたちごっこになり兼ねないと判断した私はとりあえず駅に送ることにした。
「それでさ、どうなの。彼とは」
そう言うとあからさまに嫌な顔をした。
「相変わらずって感じ」
いまいちふたりの関係をわかっていない私にとっては相変わらずもわからないのだが……。
「今更だけどサッカー部に戻ったし、相変わらず私に対して冷たいし、相変わらず何も祝ってくれないし」
なんか、愚痴を言いに来たのではないだろうか、この子は。
「しかも聞いてくれる?」
「な、なにをでしょう」
「次期部長候補らしいの」