4ー16
春眠暁を覚えず。よく使われる言葉である。いや、まさによくできている。春は暖かく心地の良い気候で眠気を誘う。冬はどうだ。寝たら死ぬと言われ他人から仕事を要求され酷使させられる。秋はどうだ。食べることに必死で、絵を描くことに必死で、読書することに必死で寝ることを行わないだろう。
そして、夏はどうだ。そう、今まさに寝れない状況下にある。
「あつい……」
パジャマを出来るだけ捲し上げ、外気との接触を多くするが如何せん体温に近い室温と湿度の高い、まさに『夏』と言う現象が私の入眠を妨げていた。
「くそ……、ねれん」
明日は次の小説を見てもらう日なのだ。出来れば頭をリフレッシュさせたい。絶好の状態で望みたい。
寝返りを打つ。動いたことによって体から熱が出る。なんて便利な機能なんだ人間という生きものは。動けば熱が出る。本当に今だけは必要のない機能だ。
こうなれば奥の手だ。
「羊が1匹……」
子供じみたやり方で眠りを誘う。因みに3匹目が飛んだ瞬間に執事が飛びそのまま戻ってきてにやりと笑うというくだらない妄想になるが。
「私を寝かせろ執事め!」
騒いだところで余計に熱くなるだけだった。冬が待ち遠しい。
まぁ、冬が来たら夏が待ち遠しいと思うのだろうけど。
こんなことしていたら目が覚めた。起き上がり外の空気に触れようと窓辺に立つ。
汗をかいた私の肌に夏風が心地よく当たる。いくらか涼しい感覚に目を閉じる。
曇り。夏の空は月が見えないものだ。静かに目を開けてそう思う。紫の空は何を言うでもなくただその場に居座っていた。
真っ暗な闇がより一層深い日に。月ではない明かりが私の目を刺激した。