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4ー15
「もうひとつ、質問」
いつの間にか雨は止んでいた。木の雫は西日に光る。夏なのに雪が降っている様な感覚に私たちが異世界の空間にいるような錯覚を覚えさせた。
彼は雨が止んだ事を確認すると傘を閉じて私を見る。
「早紀はいかなる状況でも、親友を親友と呼べるかい?」
心臓の鼓動。視線を反らしてしまう。どういうことなんだろうか。それは、私とともちゃんの関係の話しをしているのだろうか。それとも、思春期たる女子の上辺だけの関係の事を言っているのだろうか。どちらにしろ愚問だった。
「1度親友と呼んだのなら、永遠に親友だよ。喧嘩してもさ」
「そっか……。うん。安心したよ」
「それだけなら帰るよ」
痺れを切らして歩きだそうとする。
「この前の質問、しっかりと返すよ」
ずるい。そうやって、
「なによ」
私の心を見透かしながら、
「君の友だちの秋川知子さんとお付き合いさせて頂いています」
反論できないほどにまでしておいて、
「おめでとう。きっとお似合いだよ」
残酷に突き放すのだから。
空を見上げた。とても綺麗な夕暮れ色がそこにはあった。