4ー11
小学校を後にして住宅街を縫うように進み、着いたのは駄菓子屋だった場所だった。
ここのおばあちゃん、私が中学生に上がると一緒に死んじゃったらしい。それきりここに来ることもなくなったし、この場が未だに、昔ながらの駄菓子屋という雰囲気を保っているのがなんとも不可思議だった。
廃墟だと言えば頷ける。看板が着いていた場所にはこの店の名前が浮き上がっていた。錆びれた扉の前にはイスやガチャガチャがあったな。その部分は少しだけ黒くなっていた。
あの時の様に子供たちが楽しくここで遊んでいるのをおばあちゃんがにっこりと眺めている様に見えた。
1度瞬きをすると元の寂れた廃墟に戻った。私はバックの中からノートとペンを取り出して、この場所の絵を描き始める。私のまぶたの裏の絵を含めて。
書き終わって溜め息をつく。
私はあれから変わってしまったと感じたのだ。いい意味でも、悪い意味でも。きっと、あのおばあちゃんが見てもわからないだろう。私のことなんて。
現実は残酷に時を刻んでいる。
私はまた歩き出す。今度はどこへ行こう。そう考えていると横から声が聞こえた。
「もしもし、お姉さん。済まないんだが、このあたりにバス停ないかね? 病院に行こうと思ったんだけど、わからなくなってねぇ」
それはしわくちゃなおばあちゃんだった。そう、あの人に似たおばあちゃん。
「あぁ、バス停ならここを少し行けばありますよ」
「あぁ、そうかい。ありがとう」
しかし、そっちへ向かうこともせずに私の顔を覗いていた。不思議に思っているとおばあちゃんは不意に言葉を吐いた。
「元気そうでなによりだよ」
私の頭を、しわくちゃな手が撫でていた。違和感もなくされるがまま。
「どこへ向かうんだい?」
「……そうだなー。虹を見に行こうと思ってるんだ」
「ほー。今日は雨は降るのかね?」
「降るよ。間違いなく」
「そうかい」
しわくちゃな顔で笑うとバス停の方へ歩いていった。私は背を向けて歩いていく。自然と笑みが溢れた。