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虹の先  作者: kazuha
依々恋々
112/211

4ー4

 製本されたばかりの物を手渡された。今回の出来栄えは満足の一言だった。希望した絵師の方に話が通った様で、私好みの表紙絵である。この温もりさえ感じる本をまじまじと見る。

 肌は白く線の少女が悲しそうに遠くの空を眺めている。まるで亡き誰かを思うかのようだ。

(もみじ)(えだ)

 縦に書かれた題名はどうやら有名な書道家が書いてくださったようだ。絵にもマッチしてより哀くるしく思う。背表紙にはあらすじが書いてあり、そして私のサイン。帯には私の作品を勧める言葉が並べられている。

 何冊書いただろうか、……サイン。恥ずかしながら最近始めた事で、前予約限定でサイン入の本を販売している。私がサイン会を行わないため、この方法を取っている。

 しかしながら、前予約自体が何万件とあり、私はそれを時間が許す限りやらなければならない。その為に、今日1日出版社でサインを書き続けていた。

 腱鞘炎になりそうな手首を押えて帰る道はなかなかシュールだった。販売までもう一週間を切っている。休んでいる訳にはいかないのだ。

 これだけが、今の私の全てなんだから。

 目標数の5分の1程度しか書けていない。電子機器に慣れた若き私たちがこんなにも情けないとは思わなかった。少しは手書きでもして慣れさせなければなと思うが、今日はそんなに酷使しようとは思わない。

 帰ってお風呂に入って寝よう。その程度の1日だ。夕日を背に浴び進む。

 北風が肌に触れる。ふと足を止めて雲行きの怪しい空を見る。入道雲という時間ではないが、山のような雲が遠くに見える。明日は雨だ。気まぐれな天気予報をしてまた歩き始める。

 今年の夏は、寒くなりそうだ。

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