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虹の先  作者: kazuha
依々恋々
111/211

4ー3

 窓を閉めようと手に力を入れた。しかし、昨日の彼女の言葉がそれを拒んだ。

「締めないの?」

 まるで私の気持ちを感じ取る様に憂いた顔をする。そんな顔されたら、聞き辛いじゃないか。

「……なんか言わなきゃいけないこと、あったんじゃない?」

「んー……。なにかあったかなぁ」

 窓際に座って頭を掻いた。いつもそうだ。困ると無意味に話しを長引かせる。

「そうだ。知子が小説を楽しみにしてるよ」

 知子が……ね。

「今から出来を見に行くの。表紙とか見にね」

「だから、今日はそんなにオシャレしてるんだね」

「寝癖たってましたよええ……」

「綺麗だよ」

 一瞬何を言っているのかわからなかった。わかった瞬間に熱くなる思いはため息と一緒に捨てる。まったく、この人は……。

「はいはい。もう行くから」

「いってらっしゃい。気を付けてね」

 霧ガラスの窓をゆっくり締める。

 その瞬間に私はその場に座り込む。やり場の無い感情にもう押し潰されている。

 声を上げて泣けたら、どんだけ救われたか……。

 大切なものは、失ってから気付く。

 偉人は天才だ。まさにそう。

 今から自分の大切なものを海に投げ捨てる。ぬいぐるみ、ペン、パソコン、洋服……。その内捨てたものを欲しがる様になる。そしていつの間にか自分を海底に捨て、見なくなった空を羨ましく思うだけしか出来なくなる。

 まさにそう。きっと今は、彼女を羨ましく思っている、それだけなのだ。

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