4ー1
へー、そうなんだ。素直に思う。寝ぼけた頭脳がフル稼働して情は沸き上がっても、その言葉はすんなりと入ってきた。
「前にも言ったじゃん……。その……本当に信じてる人には秘密にしたい事言わないと、やっぱり苦しいから……さ。自分……。だから、さ……」
笑い話でもなければ、悲しい話でもない。友達の大切な話。視線を反らす彼女に同情もなければ同調もない。
「そうだったんだ」
私が返事をしなければただの独り言。作り笑顔の様なぎこちない顔。まっすぐと目を見つめる。その奥に秘められた光を眺める。
「うん。……そう」
何も変わらない。その一言は今の真実。私と彼女とそして彼との関係は何も変わっていない。
私は何かを求めているのだろうか。
何をこんなにそわそわしているのだろうか。
何を憤慨しているのだろうか。
私の中の小さな小人たちが暴れている。何かを求めて。
「ねぇねぇ。菊川瑞希の新作、いつ出るかな」
ともちゃんが外を見る。それにつられて私も外を見る。そこにはより青々と萌えるオウギの葉が枝垂れて揺れていた。
「私には、……わからないよ」
その明るさが、嫌に眩しい。まるで彼女を祝福するように。