3ー47
そのメモリーの1番始めは香川くんと絵理ちゃんがオウギの目の前にて向かい合わせで立っていた。
「はいこれ、告白シーン」
「え? そんなの撮ったの!?」
「まぁまぁ。それでさ」
「これが成功しちゃったのよねー」
ともちゃんが面白そうに言うとちーちゃんは舌打ちを打った。
「絶対失敗すると思ったのに」
「心の声漏れてるよー」
「いいの!」
次に回す。それは絵理ちゃんのあざの写真やタバコを吸う森谷くんの写真など多分本人に見せた様な写真がいくつも続いた。
「これ大変だったんだから! ホント、バレるかと」
「1回バレかけたよねー。犬の鳴きマネしたのいい思い出。あの人たちバカだよねー」
この二人、本当に危ない道渡ってるんだなと思うと共に、この写真に救けられた事にまた涙が上がってくる。
「森谷の野郎は退学処分らしいよー。良かったね」
何人に助けられてるんだろう。助けるためにやっていたのがいつの間にか助けられていた。
「あらあら、まだ泣くのね。お姉さんの胸貸してあげる」
「ない胸」
「だから! 心の声!」
塞翁之馬。幸せなことが転じて不幸なことになったり、その逆もありきで世の中成り立っている。森谷と付き合うことができたけれど、酷い性格の持ち主で、それと別れる事ができると本当の愛に気付く。
私にも言えることだろう。
「あ、トイレ行くね」
ちーちゃんが保健室から出ていく。
私とともちゃん。ふたりきり。異様なまでに静かな学校。私はともちゃんから離れる。
「私、好きな人いるんだ」
「そうなんだ」
私の告白に驚かないともちゃん。それだけの会話。無音が異様なまでに……。
「早紀ちゃんだけには言わなきゃいけないなと思ってたんだ」
ともちゃんの告白を耳に刻ませた。
「私の彼氏、ーーーー飯田紳助ーーーーなんだ」