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虹の先  作者: kazuha
塞翁之馬
104/211

3ー43

 至って静かな空間。日の当たらないこの場所は誰からも見られない場所でもあった。そう、あの不良グループが挙ってたむろする場所である。

 体育館裏。雑草と木だけが生い茂る。来ること自体が最早悪いことをしようとする現れだろう。話しを始める前に1度身構える。

「それで、話しって?」

「いや、つい昨日、別れ話を切り出されちゃってさ」

 そうなのか。私は嬉しくなると同時に不安が脳裏を過る。

「それでなんだけど、理由聞いたらさ、早紀ちゃんの名前が出てきたからさ」

 にやりと不敵な笑みを浮かべる。

「今回は、オレの愛が通じなかったんだなって思ったからさ。きっぱり別れたよ」

 こんなに簡単に別れてくれるなんて思ってなかった。あんな執拗に見せびらかしていたのに。

「でさ、早紀ちゃん。ヒミツのことなんだけどさ……」

「ヒミツ?」

 刹那壁際に追い込まれる。そして私の頭の直ぐ横を手が通る。

「えっ、ちょっ」

「黙っててあげるからさ、オレの女になれよ」

 油断していた訳ではない。大胆にも力業で拘束された。身の危険を感じ息を大きく吸う。

「あ、大声とかやめてね。傷つけたくないからさ」

 悪魔でも憑いた様な顔。

「ダメとは言わせないよ。だって、早紀ちゃんの1番知られたくないことをね」

「ダメ、それは……」

「じゃぁ付き合ってよ」

「それは……」

「へー、いいんだー……。菊川瑞希さんの正体は……!」

「やめて!!」

 更に彼の顔は恐ろしく笑う。

「顔上げてよ。可愛い顔が見えないじゃんか」

 額を強く押され壁に打ち付けられる。

「まぁ嫌だって言っても、今日からオレの女だ。逆らわせないよ」

 何もできない自分が惨めだ。始めからこのつもりだったなんてわかりきってたのに。

 森谷の顔が近づいてくる。私の唇を狙っているのがすぐにわかった。顔を外らそうにもあまりの力強さに動かせない。

 息がかかった。覚悟を決めたのはその時だ。瞼を強く閉じ、なるべくなにも感じないように暗示する。数秒だ。我慢は。それで私のヒミツが守られるのならば。絵理ちゃんが助かるなら。

 こんなにも願わない愛が今私に降りかかる。その直前だった。

「あれ? 何してるのかな? 森谷くん」

 それは私のよく知っている声だった。

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