3ー42
晴天。天気予報は全国を真っ赤に染め、今日も猛暑が押し寄せる。汗をかかない方の私も流石に背中を伝う汗を意識せざるを得ない。
夏休み前に緩む気持ちは何処へやら、私は緊張にがんじがらめ。正義感で鼓舞し学校へ向かっているがそんなガラスの器、いつ壊れてもおかしくはなかった。
今日で私の中にいるわだかまりを消す。後悔と言う名のわだかまり。
授業は耳に入らず外に浮かぶ雲は動いている気がしなかった。静止画の様なこの四次元の空間が、私には二次元に感じられた。
時間が進まない。地獄で刑罰を受けている時こんな感じなのだろうか。ひとつの授業が終わるのに1日経ったようだ。
そんな緊張した時が午前中続いた。
「どうしたの? 夏バテ?」
張っていた風船を針で撫でる様にともちゃんは話しかけてきた。
「え? ん? そんなことないよ?」
「ふーん」
私を真っ直ぐに見る目。濁りない目。
「なに?」
「いや別に。そろそろ小説出ないかなーって話ししに来たの」
なんでそんなことを聞きにわざわざ私の所に来るのか。
「そろそろだと思うんだよねー。なんとなく」
「私にはわからないよ」
大きく溜め息を吐くと鼻でふーんと放って私の側から離れる。なんだったのか。
気が付くと風船から空気は抜けていた。肩の荷が降りたかの様な錯覚。雑念がなくなったかの様に自分の思考がまっすぐと向いた。
この感覚……。昔、小説を書いていた時のような感覚。今ならなんでも書ける気がした。
そんなことよりも、私にはやらなければならないことがある。私は後ろを向いた。
「ねぇ、昨日の話だけど」
「ここじゃなんだからさ、体育館裏で話そうよ」
彼はーーーー森谷は獲物を捕らえた様ににやりと笑った。