3ー40
「泣かせたの?」
いちいち鼻につく言い方だ。
「違うよ。相談に乗ってたら泣いちゃったの」
「どんな話し? オレが原因なら謝るよ」
心にもないことをよく言えるものだ。
「なら、絵理ちゃんと……」
「お! 丁度ここにいた! はーい、国語の宿題だよー」
ともちゃんが私を押しつぶすように前に出た。
「終わりかな? ねーねー先生に報告しに一緒に来てくれない?」
ちーちゃんが私の肩を引っ張る。
「え? なんで? 私が?」
「いいからー、ほらはやくー!」
「え!? え!?」
力強く引っ張るものだから廊下まで一気に連れていかれてしまった。そのまま階を1つ下がり誰もいないような所に連れて行かれた。
「職員室はもうひとつ……」
「なにバカなことしてんだよ!」
急に浴びせられた罵声に私は驚く。
「言ってんだろ! 関わるなって! ふたりがそれでいいなら関与することないんだよ!」
その言葉に何かが切れる音がした。
「あんなんで良い訳ないし! なんなら絵理ちゃんは良くないと思ってたよ! なんでそんなに味気なく言えるのさ! 友達じゃん!」
「人情劇じゃないんだから友達とか違うとかで判断するなよ!」
「なにが悪いの!」
「悪いよ! なんでそんなに無鉄砲なんだよ!」
「助けたいの!」
「そんなんじゃ無理だって言ってんだろ!」
「無理なんかじゃない!」
「無理だ!」
「無理じゃっ……!!」
バチン。大きな音がした。気付けば顔は横を向いていた。左の頬が次第に痛みを感じる。叩かれた?
「もう、知らない!」
顔を戻すと、足早に歩いていくちーちゃんの姿があった。どういうことだろうか。理解が出来ない。なんでちーちゃんがあんなに怒ってるのか、理解できなかった。それが余計にムカつく。なんであんなに偉そうなんだろうか。
「こっちの方が知らないわよ」
チャイムが鳴る。無意味に鳴る。はやく戻らなければ。遅刻しちゃう。そう思っても、涙が止まらない。